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三兄弟の元教師ママ。二男が自閉症です。発達障害を取り巻く環境を考えます。


by kamenrider-wizard

日々の記録について、その3


前回は、サポートブックのお話をしました。


お子さんが、家庭の外に出たとき
どのくらいの困り事がおきて、それはどのくらいの困り感で、どのくらいの手助けが必要なのか


その困り感の振り幅が大きいほど、社会に出て行くには、ハードルになります。

ハードル(= a hurdle)、つまり、日本語に訳すと、障がいです。


ハードルが多ければ多いほど
それをクリアするために、たくさんの手助けが必要になる

それを簡潔に知ってもらうための用語として、発達障がい(現在は、ひとまとめに自閉症スペクトラム、と言います)という言葉が使われるわけです。

だから、発達障がいという呼称は、勘違いされやすいのですが、病気などではなく、
『困り事が多いためにサポートが必要』ということを表すものになります。

そして、発達障がい(学習障がいも含む)かどうか、の判断は、
専門の医師免許をもったドクターしか行ってはいけないことになっています。

ちょっと心理学を学んだ程度の知識と憶測で、あなたのお子さんは発達障がいかも、などと気軽に言ってはいけない、ということです。


診断されたことで
目の前の我が子がなにか変わるわけでもありません。
なにひとつ、診断前と変わらないのです。

極端にいえば、誰にもいわなければ、誰も我が子が発達障がいと診断されたという事実を知ることもない、という話になります。

別の局面から言えば、診断されようが診断されまいが
困り事がなくなるわけでも増えるわけでもない。
困り感が薄れるわけでも濃くなるわけでもないのです。


だったら、発達障がいの診断なんかされなくていいのでは?と思うママさんもいると思います


そういう点では、診断は絶対義務のものではないので、ドクターの診断を受けないという選択も、もちろんありです。

何度も言いますが、だからといって、目の前のこどもの状況はなにひとつ変わらないわけです。




ここで、診断を受けることのメリットをお話しします。


発達障がいの診断を受けていると、あらゆる機関からのサポートが受けやすくなります。


まず、ひとつ目
これは自治体によりますが、助成制度や、税の減免措置、公営住宅入居優遇措置などがあります。(それぞれの自治体に問い合わせすると詳しく教えてくれます)


そして、ふたつ目
テーマパーク・博物館や美術館、動物園や植物園、映画館などでは、発達障がいの診断が下りていることを示す手帳(診断がついた=手帳発行ではなく、任意申請することで発行されるものです)などを提示すると、入園料が無料・または優遇されたり、場合によっては長時間並ばずにアトラクションに優遇で乗せてもらえたりもします。

各種施設利用料金だけでなく、地下鉄やバス、タクシーの料金も無料・または優遇されたりもします。
もちろん同伴者にも優遇措置がなされます。


人がたくさんいるとパニックになってしまう
長時間順番待ちができない

などの困り事特性がある場合、このような措置はとてもありがたく、うちにこもりがちにならずに外に出て、いろんなことが楽しめる『権利』が守られるのです。


そう言った意味では、前回の記事でお話しした、
A. 他人のめいわくになるもの
B. 家族のめいわくになるもの


の回避方法ひとつ目、
『その場に行かない』を使わなくてよくなります。

つまり、『発達障がいである』という診断は、
回避方法ふたつ目の『サポートブック』の、
『公的に幅広く効力をもつ印籠』のようなもの、と言えるということです。

より社会生活を快適に送るため
困り事を的確に知ってもらい
的確にサポートを受けるため

そのために、発達障がいの診断はあります。



ひとはひとりでは生きていけません。

いつか親に先立たれ、こどもがひとりで高齢になるまで生きて行かなければならなくなったとき


なんらかのサポートを受けているか
サポートを受けていないか

それは大きな差だとわたしは考えます。


家族以外のいろんなひとや機関に、 困り事を知ってもらい、
助けてもらい、支えてもらうことは、とても大切です。
困り事が多いことをひた隠しにしても、引きこもる生活になるだけです。

奇しくも、現代日本では、
スマホさえあれば、一歩も外に出ないで生活することが不可能ではないのが現実です。
そのまま、回避方法ひとつめ『その場に行かない』で解決し続けることで、
結果、社会不適応を起こし、さまざまな問題を引き起こすことが、完全な二次障がいです。

実は、発達障がいそのものよりも
この二次障がいのほうが、深刻な事態になることが多いのです。


そのため、今現在のこどもの様子はもちろんのこと、彼らの将来の生活ビジョンは、親御さんが実に真剣に考える必要があります。


高齢者の孤独死なども問題になっている今
少なくとも公的機関とつながっていることで
ヘルプ信号が出せない困り事満載のこどもたちも、将来長きに渡って気にかけてもらえるチャンスは格段に増えます。

これを、成年後見制度といいます。

また、就職支援制度などもあり、たとえひとりになっても、受けられる手助け支援の幅もさまざまにひろがります。



私は初めの記事で書きました。
発達障がいの有無が問題ではない、と。

日々お子さんの言動に振り回され、
この子は障がいがあるのでは?と憂うきもち。

こどもを憂うきもちは必要です。
だって親なんですから。

でも、問題の核心は、発達障がいの有無ではないのです。

発達障がいの有無に関わらず
『困り事があれば、誰かに助けてもらう』

それを言えるか言えないか

ヘルプを出せること、なんら恥ずかしいことではないです。

これをできるかできないか、そこが今後どのような人生を送ることになるかの分かれ道かな、とわたしは思っています。




ですが、発達障がいに対する正しい理解という点では、日本はまだまだ後進国です。

もともと単一民族国家である日本は
変化や、自分と違う様子を受け容れることがとても苦手な民族です。
自分とちがうものを『未知の領域』ととらえ
警戒したり怖がったり、果てには蔑んだりする傾向があります。

そのために、障がい全般について、間違った理解がはびこっているのも、残念ながら事実です。

その点、個のパーソナリティを重んじる文化である欧米とは雲泥の差です。


発達障がいの診断そのものをうけることをためらう親御さんが多いのは、この辺りからくる迷いであることも否めません。



この間違った理解について、また次回は詳しくお話ししたいと思います。










by kamenrider-wizard | 2017-01-24 17:42 | 家庭でできること・知ってほしいこと